スバルテクノロジー:「アイサイト」産みの親、樋渡穰に聞く。IBMをパートナーに選んだ理由1
SUBARUは、運転支援システム「アイサイト」で多くのファンを獲得した。「自動車事故をゼロにする」という“究極の目標”達成に向けて、2016年に日本IBMと協業。
まずはデータ解析で手を組み、今後はクラウドやIoT、「Watson」を含むIBMの知能化技術を用いたシステム開発でも連携を検討する。「IBM Watson Summit」のキーノートスピーチに登壇し、人工知能の活用を検討していく姿勢を示したスバル。そのスバルが考える「安全」、それを実現するための開発論をアイサイトの生みの親、樋渡穰に聞いた。
全然売れなかったアイサイト
樋渡さんは、27年前にアイサイトを企画して世の中に送り出した生みの親です。国内での搭載車数は累計で40万台を超えるヒットを生みました。
樋渡穰:アイサイトはステレオカメラを用いて人やモノ、道路を認識して運転を支援する、スバルにしかない独自システムです。「自動車事故をゼロにする」という私たちの目標を実現するためのキーテクノロジーが詰まっています。
私は、1989年に原理を確立したのち、1999年に発表した世界初のステレオカメラによる運転支援システム「ADA(Active Driving Assist)」の開発から携わっているのですが、最初は、高額だったことと、そもそも強いニーズがなかったので、まったく売れずにとても苦労しました。今思えば、時代を先取りしすぎてしまっていたのかもしれません。
ですが、あきらめずに地道に精度を高め、アイサイトver.2を出した2010年に「ぶつからないクルマ?」という宣伝文句でニーズの掘り起こしに成功。おかげさまでアイサイトは、2008年から国内で累計40万台を出荷しました。
今ではスバルの全車種のうち約90%にアイサイトを搭載することが可能で、汎用的なオプション製品になりました。スバルを代表するオリジナルシステムに成長したと自負しています。正直に言って、ここまでヒットするとは思いませんでしたので、私自身もこの状況に少々驚いています。
20年信じ続けた独自方式
─他社も運転を支援するシステムを開発していますが、アイサイトは何が違うのですか。
独自開発の2つのカメラを内蔵したステレオカメラを用いて、走行時の画像データを分析し、車両制御に用いていることです。他社はレーダーや単眼カメラを用いて人やモノを認識しているのですが、ステレオカメラで撮影した映像のほうが精度は高い。
私たちはこのステレオカメラの優位性を開発当初から信じて採用し続け、高所得者だけでなく、たくさんの人に利用してもらえるように、価格を抑えて量産化することに成功したのです。
安全に貢献した実績の一例を挙げると、平成23年〜26年のデータですが、アイサイト搭載車は非搭載車に比べて61%事故発生率が軽減されており、前面追突だけでみれば83%減少しています。他社の話はここでは避けますが、私たちのような精度の高さを証明できているメーカーはほかにはいません。
映像データの解析を日本IBMのシステムで行うことを決めた。はこちらから→