電動化を急加速させる背景
群馬県に国内唯一の自動車製造拠点を置くSUBARU(スバル、東京都渋谷区)は、2030年に世界販売120万台以上を目指し、うち50%の60万台を電気自動車(EV)とする目標を打ち出した。電動化を加速させる大崎篤社長(61)に抱負や展望を聞いた。
―EVの目標について。
「STEP」(18~25年の中期経営ビジョン)の後半から、中村知美前社長の下で戦略を議論していた。主戦場の米国市場の電動化の流れが速いことと、環境規制が厳しくなってきた状況を踏まえ、昨夏以降に議論を加速させた。規制にどう合致させていくか、電動化をマーケットがどう受容していくか双方のギャップを埋めていくのが最も悩んだところだ。
―30年時点で世界販売120万台以上の目標を掲げた理由は。
米国市場で、商品がガソリン中心から電動に変わる流れをうまく捉えて販売を伸ばしていきたい。シェアを現在の4%から高めたい思いもある。苦戦している中国や欧州でチャンスが来る、国内市場でも販売台数を維持したいということを総合的に考えて数値を出した。
―欧州連合(EU)が2035年にガソリンなどで走るエンジン車の新車販売をすべて禁止するとした方針を変更し、環境に良い合成燃料を使うエンジン車は認めると表明した。市場のEVシフトがどう進むか読みづらい中、EV投入計画をアップデートしたのはなぜか。
米国市場の状況を総合的に考えて、我々としてはバッテリーEV(BEV)の戦略を少しアグレッシブにした方がいいというのが方針の背景だ。
今回の方針は柔軟性を持たせている。米国で、28年に40万台のEV販売を狙う計画を発表したが、あくまで生産能力の問題であって、マーケットがそこまでいかなければその分はガソリン車やHV車を売らなければならない。状況に応じて戦略を変更していくような動きは取っていきたい。戦略を変更する可能性は十分ある。
―どうやって柔軟性を担保していくのか。
本工場(太田市)と矢島工場(同)では、どのラインでもいろいろな車種が流れるような混流体制をとっている。米国のインディアナ工場でも日米どちらの車種でも流せるような柔軟性を持ってきた。電動車両に切り替えていくためには、まずは25年を目指して、矢島工場で(EVとガソリン車を)混流生産してBEVの変化を吸収していく。ある一定領域までBEVが増えてきたら、専用の工場で賄う。日米でもガソリンとBEVの分担を始めれば、いろいろな変動に対して構えられる。
国内市場でどう勝負するか
―米国でEVを現地生産する方針を打ち出したが。
拡張の領域に入るのはこれから先で、今はマーケットがどう変化してもある程度の生産キャパシティー(能力)をもって柔軟性を確保する状況だ。環境規制もこれから厳しい方向にいくと思われるのでその見極めをしていく。一番大事なのは顧客が電動商品をどう利用するかだ。
―世界市場への認識は。
米国は顧客の需要が引き続き強く、豪州やカナダも好調だ。大事に育てたい。一方、中国市場は読みづらいところがあり具体的な策を練っていく段階ではない。輸出の関税の問題もあり厳しいが、大きなマーケットなのは間違いない。
これからのSUBARUに期待したい。