スバル100年目の社名変更 機能から情緒に舵を切ったSUBARUのマーケティング

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2016年6月28日、富士重工業は定時株主総会で「株式会社SUBARU」への社名変更が承認され、2017年4月1日付で新社名に切り替えることが発表されました。
この社名変更にあたりSUBARUでは新聞広告などに加え、オンライン広告では唯一SmartNewsに出稿しました。社名変更の背景やプロモーションについて、マーケティング推進部 宣伝課の安室敦史様に聞きました。(文・聞き手 マーケティングディレクター SmartNews Creative HUB 松岡洋平)

■100年目の社名変更

富士重工業は旧中島飛行機グループの企業を再統合する形で1953年に設立され、5社が統合されたことから、「六連星」(むつらぼし)と呼ばれるプレアデス星団の和名から車名を名付け、1958年発売の「スバル360」などで親しまれていました。

旧中島飛行機製作所の設立が1917年。そこからちょうど100周年にあたる2017年に社名とブランドを統一することで、「SUBARU」ブランドの普及を強化していくことが決定されました。

社名変更を発表した2016年5月12日には同時に電気自動車(EV)の投入(2021年)も発表しました。4輪駆動車など自動車業界の中で”走り”に追及してきたとされるSUBARUがEVを投入するのはサプライズでもありましたが、環境規制の厳格化が見込まれるヨーロッパや中国などグローバル市場に向けて「SUBARUらしいEV」を作っていくために、汎用エンジンンを制作していた産業機器カンパニーを2016年10月に自動車部門に統合し、社内のリソースを自動車と航空宇宙に集約することで、社名変更もあわせSUBARUのブランドを高めていくことに力を結集させるという社内向けのメッセージも込められています。

■機能から情緒に舵を切ったSUBARUのマーケティング

これまでの自動車の買い方は、いくつかのディーラーをまわってみて、比較検討しながら購入する、というものでした。しかし現在では、最初に行ったディーラーで購入を決めてしまいます。ディーラーに行く前に自分でネットで調べて、来店するときにはオプションも含めてかなり候補を絞り込んでいるためです。
少子化の影響もあり自動車に対する国内需要は減っていきます。その中で機能訴求だけで購買に結び付けるのは難しい時代になっています。そこで2014年に、プロモーションの方向性を大きく転換し、スバルの自動車がある生活、またスバルというブランドを好きになってもらうための情緒価値の訴求に切り替えました。
BOXERエンジンをはじめとしたプロダクトの特徴やスペックを強調するなど、機能訴求によるプロモ―ションは、世界中で「スバルは走りがいい」というブランディングにつながっていました。しかし自動車自体のコモディティ化が急速に進む中で、スバルの提供する安心や愉しさを打ち出し、コンテンツを楽しんでいただくオウンドメディアやウェブサイトの使い勝手、ファンイベント設計なども大幅に見直しました。



たとえば表示スピードにまで注力してウェブサイトを改善したことでトライベック・ブランド戦略研究所の実施するWebユーザビリティランキングでは「自動車・自動二輪」業界で3年連続1位となるなど、成果が出ていますし、オリジナル動画の制作により今までリーチできなかった層へのアプローチなども実施し始めています。
また、スバルではコミュニケーションアプリ「マイスバル」のサービス提供を2017年2月27日より開始していますが、このサービスはユーザーとスバルの絆をより強くすることを目的とした無料・会員制サービスで、担当店舗(マイショップ)へ簡単にメール送信や電話ができる「コンタクト機能」や、アプリ上から点検予約のリクエストを送信できるWEB入庫予約機能、事故や故障などのトラブル時には、位置情報とクルマの写真をコールセンターに送信することで、レッカー車の手配など、より迅速・的確な対応が可能になるといった特徴があります。
「マイスバル」アプリはディーラーでの新車お買い上げ時や点検時など、さまざまなコンタクトポイントでお客様に利用を開始いただいており、開始一か月ですが今後、毎月数万人以上ずつユーザが増えていく見込みです。

アプリでは点検履歴やマイショップの営業時間・連絡先などが確認できるマイカー&マイショップ情報や、周辺のおすすめドライブスポット情報、スバルに関わる最新情報なども提供していくことで、スバルのある生活をより充実したものにしていく狙いがあります。
こうしたアプリの提供も含め、さまざまなタッチポイントでの顧客体験をより高めていくために、DMPによるデータ活用により、これまで現場の経験や感覚で作り上げられていた「スバルの自動車を購入する人」のイメージについて、実売データやWeb上のトラフィックなどさまざまなデータを取得統合、分析することで全体のマーケティング施策の最適化を推進しています。
広告宣伝のメディア選定にあたっても、DMPを活用した一気通貫のマーケティングにより、しっかりと購買につながっているか、新しいターゲットを開拓できているか、など多角的に検証するようにしていきたいと思っています。

社名変更にあたっても、この「機能から情緒へ」というアプローチは通底しており、スバルがモノを作る会社から、笑顔を作る会社へ変わっていくというメッセージをダイレクトに届けていくことを大事にしました。
レガシィやWRXといった代表的な車種をとりあげたり、世界ラリー選手権(WRC)について触れたほうがこれまでの”走りのスバル”からはイメージされやすいかもしれませんが、祖業である飛行機やスバル360など「これまで」の歴史に加えてどういった生活、愉しさを提供していくのかという「これから」に焦点をあてたクリエイティブを採用しました。

■SmartNews上で「ニュースとして届ける広告」は、DMP戦略とも合致する

今回のキャンペーンでは新聞広告と特設ウェブサイトに加え、オンライン広告では唯一SmartNewsに起動画面広告と静止画/動画広告を4月3日0時から出稿しました。

もともとオンライン広告はやる予定はありませんでした。社名変更については製品や機能とは異なりご挨拶の意味合いも強く、ある程度ニュースになることも織り込めますので必要性をそこまで強く感じていなかったというのが実際のところです。

SmartNewsさんからは新潮社から出た村上春樹さんの最新刊プロモーション事例などを紹介いただいており、「スマホでニュースとして届ける」というユニークな立ち位置とデイリーで300万人、事例でもかなりの誘導があるということを説明いただいており、それなりのインパクトがあるだろうということで実施しました。



3つ合わせて150万リーチ以上、さらに起動画面広告では5%以上のCTRが出るなど、高いインパクトを実現し、静止画広告や動画広告と合わせ、当日に特設サイトに来たユーザのうち3割はSmartNews経由となりました。毎日頻繁に使われるニュースアプリならではのDAUの多さという特徴を活かした”ニュース”としての広告として機能していると感じました。
SmartNewsに着目したもう一つの理由は、スバルの社名変更に興味を持つような人それもカジュアルなファンやこれまであまり興味を持たれていなかった層について検索以外の方法で大量に獲得できるということは、現在進めているDMP戦略にとって非常に有効な施策だったということです。
現在スバルでは店舗での購買や点検履歴、各種広告、さらにアプリも含めたすべてのコンタクトポイントのデータ統合を推進しており、より効率的かつ有効なコミュニケーションに向けてDMP戦略を推進しています。
このDMP戦略を通じて、スバル自体が自動車の機能から情緒に舵を切る中で、自動車だけでない、たとえばスポーツやアウトドア、ライフスタイルなどさまざまなメディアでどのような情報が求められているのか、よりシームレスな形で顧客像を作り上げ、新しいブランドを確立していきたいと思っています。
たとえばSmartNews上で社名変更の告知広告に反応した利用者がどれだけマイスバルのアプリ登録を行っているのか、またアクティブ率に影響あるのか、また自動車購入に至る過程でどのようなニュースを見るようになるのかなど、多面的な形で連携を深めていければと考えています。

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