スバルの新型アイサイトはどこまで自動運転が可能か? 一般道でも使いたくなる性能に魅力・・・鶴原 吉郎
富士重工業が6月20日に発売した新型ワゴン車「レヴォーグ」。全幅が50mm大きいほかは、ほぼ先代(4代目)「レガシィ」並みの車体サイズに抑えた。
富士重工業が6月20日に発売した新型ワゴン車「レヴォーグ」。国内市場向けには車体が大きくなりすぎた「レガシィ ツーリングワゴン」に代わるモデルとして、ほぼ先代レガシィ並みに車体サイズを抑えたレヴォーグは、筆者の周囲でも関心の高かった新型車だ。
速度差が時速50kmでも停止
レヴォーグにはいくつか興味深い技術が搭載されているのだが、目玉の1つが、ステレオカメラを使った運転システム「EyeSight(アイサイト)」の最新版である「Ver.3」が初めて搭載されたことだろう。ステレオカメラの視野角と認識可能な距離を従来の「Ver.2」よりも40%拡大するとともに、撮像素子をモノクロからカラーに変更することで、赤信号や先行車両のブレーキランプなどを認識できるようになった。この結果、先行車両との衝突回避が可能な速度差を、従来の時速約30kmから約50kmに、また衝突被害を軽減できる速度差も、時速約50kmから時速約70km以下にそれぞれ拡大している。
このように、緊急時の自動ブレーキの性能を向上させる一方で、普段の運転でも便利さを実感できる機能も追加した。走行中の道路上の白線を認識して、車線の中央を走行するようにステアリング操作をサポートする「車線中央維持」である。時速約65km以上で走行している時に、車線の中央を走行するように、ステアリングを自動的に操舵するというものだ。
ただ、この機能が動作するにはいくつか条件がある。1つは、「全車速追従機能付クルーズコントロール」が動作していること。この全車速追従機能付クルーズコントロールは、ドライバーがアクセルやブレーキを操作しなくても、同じ車線を走る先行車両に追従走行できるというもので、従来のVer.2も備えていた機能だ。そしてもう1つの条件は、自動車専用道路などを時速約65km以上で走行していることだ。この「自動車専用道路など」というのがミソで、高速道路のような、一般道路よりも車線の幅が広い道路でないと動作しないのだ。
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クルマが進路を修正
もう1つの新たに搭載された機能は「車線逸脱抑制」。これは自動車専用道路などを約時速65km以上で走行している場合に、車線からはみ出しそうになると、車線の内側に戻そうとする力をステアリングに発生させるというもの。一見「車線中央維持」に似ているが、前者が車線中央を維持するのを補助する、いわば半自動操舵の機能であるのに対して、後者は車線からはみ出すのを抑制する機能である点が異なる。従来のVer.2は、車線を逸脱しそうになると、表示や音でドライバーに警告する機能にとどまっていた。この「車線中央維持」と「車線逸脱抑制」の2つの機能を合わせて、同社は「アクティブレーンキープ」と呼んでいる。
「アイサイト(Ver.3)」のステレオカメラ。バックミラーの左上方と右上方に2つのカメラが搭載されている。撮像素子をモノクロからカラーに変更することで、赤信号や先行車両のブレーキランプなどを認識できるようになった。
このほかの新機能としては、「AT誤後進抑制制御」と「危険回避アシスト」がある。AT誤後進抑制制御では、後退時にドライバーがアクセルを急に踏み込んだり、あるいは後退速度が高い場合に、ドライバーに表示と警報音で知らせると同時にエンジン出力を制限して、急な後退走行を抑制する。危険回避アシストは、前方の障害物と衝突しそうになって、ドライバーがステアリングを切って障害物を避けようとするときに、横滑り防止装置を作動させて、クルマの向きをより大きく変えるように支援するというものだ。
先行車両との速度差が約50kmでも停止する能力を備えているというのは、自動ブレーキの中でもかなり高い性能だ。筆者の古巣でもある日経Automotive Technology誌が2014年7月号の特集で各社の自動ブレーキをテストしているが、このテストで、富士重工業のアイサイト(Ver.2)は評価車両中で最高評価を得ている。
車両(を模擬した垂れ幕)に対しても歩行者(を模擬した人形)に対しても、高い速度から確実に停止する能力を示したのが、最高評価を得た理由だ。アイサイトに高い評価を与えているのは同誌だけではない。欧州で新車の安全性を評価するユーロNCAP(新車アセスメント)の資料でも、アイサイトは最も高い速度から停止能力を備えた自動ブレーキだと評価されている。
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