新型インプレッサ:スバル インプレッサ新型、石井デザイン部長に聞く「ダイナミック×ソリッド」への思い・・・千葉匠
ニューヨーク国際自動車ショーにて、スバル新型「インプレッサ」が発表された。5世代目となる同モデルは、単に「インプレッサ」の新型というだけでなく、スバルの新世代プラットフォーム「SUBARU GLOBAL PLATFORM」を初めて採用したモデルとしても注目を集めている。今後10年ほどの長きにわたって、スバルの新型モデルはすべてこのプラットフォームが採用されることになります。
「ダイナミック×ソリッド」というデザインコンセプトを2014年5月に「際立とう2020」と題した中期経営計画に明記しました。顧客に提供するブランド価値を「安心と愉しさ」と定めた上で、中身の詰まったソリッドなデザインで安心感を、見る人をワクワクさせるダイナミックなデザインで愉しさを表現する。
公開した新型「インプレッサ」に、LEDヘッドランプの照射方向をハイビームからロービームに連続的に変えられるシステムを搭載。
スバルはこのシステムを、2015年10月に部分改良した新型「フォレスター」に採用しており、新型インプレッサが2車種目の採用になる。同システムでは、ハイビームとロービームの切り替えに遮蔽板を使う。モーターを使って遮蔽板を動かすことで、ハイビームからロービームに連続的に切り替えられる。
夜間にハイビームで走行している時に前方車両や対向車が自車に近付いて来ると、両車の距離に応じて照射範囲が連続的に変わり、前方車両などの運転者に常にハイビームが当たらないようにする。前方車両などの検知には、スバルの安全運転支援システム「アイサイトver.3」のステレオカメラを使う。
なお、スバルは2016年4月20日に、セダンタイプの新型インプレッサ(北米仕様)を日本で初めて公開した。5ドアのハッチバック車も用意しており、今秋にも日本や米国で発売する計画である。
この新時代のスバルデザインを体現する量産車第一弾が、3月のニューヨークモーターショー16でデビューした新型『インプレッサ』。米国仕様の新型が国内でお披露目された機会に、石井守デザイン部長に「ダイナミック×ソリッド」へ込めた思いを聞いてみた。
「先輩たちがやってきたスバルらしいデザインを受け継ぎ、進化させるのが“ダイナミック×ソリッド”。だから、例えば『レヴォーグ』や現行『レガシィ』にも当然、その要素は入っているんです。新型インプレッサでデザインの方向性を大きく変えたわけではない」と石井部長。「安心感やソリッド感については、お客様から評価していただいていると思う。その一方、ワクワク感が足りなかったので、そこは進化させたいと考えた」。
◆機能を犠牲にしないダイナミック表現
石井部長によれば、「新型インプレッサでは“ダイナミック×ソリッド”を120%表現した」とのこと。では、“ダイナミック”は具体的にどこで、どう表現されているのか? ひとつの鍵は全幅だという。
新型インプレッサは新しい「スバル・グローバル・プラットホーム(=SGP)」を採用した第一弾でもある。現行車よりトレッドが広がり、全幅は+37mmの1777mm(国内でのカタログ表記は1775mmになる見込み)。それを活かして、「ドアガラスの上端は現行車と同じ位置にしながら、下端を15mm外に出してガラスの傾斜を強めた」と石井部長。
「現行車はガラスが立っていてハコっぽい感じがあったけれど、ガラスを寝かせることでそれを解消した。さらに、真上から見たボディサイドを樽型にカーブさせ、ドア断面にもしっかりと張りを持たせるなど、フォルム全体で動きを表現している」。
サイドビューのシルエットも現行車よりスリークでダイナミックになった印象だが、「ハッチバックに関しては、車両中心線上のルーフラインは現行車とほぼ同じ。スタイリングのために居住性や視界、荷室の使い勝手を犠牲にできないですから」と、これはいかにもスバルらしい答えだ。
ただし、ハッチバックのルーフ後端は現行車よりわずかに低く、そこに取り付けたスポイラーは現行車よりずっと長い。結果としてルーフ後半の後ろ下がりのカーブが長く、伸びやかに見えるというわけである。
全高は現行車より10mm下がったが、SGPは従来よりフロアの地上高が10mm低いので、室内空間を減らしてはいない。その一方、セダンではリヤデッキを27mm高くした。第一義的には空力のためだが、ダイナミック表現でもある。「ルーフからリヤデッキへ滑らかなラインを引くことができた」と石井部長。そして、こう続けた。
「スバルは後方視界を重視してハイデッキ・プロポーションを避けてきたが、現行車でリヤウインドウの下端にあったハイマウント・ストップランプを上端に移すことで、後方視界とハイデッキを両立できた」。
◆ヴィジヴ 2 譲りのダイナミックなソリッド表現
ボディサイドを特徴付けるのが、ショルダーラインの下のえぐったような凹面だ。ショルダーラインは直線的に通しながら、えぐった凹面の下端のラインはV字を描く。2014年3月のジュネーブモーターショーでデビューした『ヴィジヴ 2 コンセプト』にもあったラインである。
「2012年頃に次世代のスバルデザインに向けて先行開発を始めるなかで、ヴィジヴ 2もデザインした」と石井部長。もちろん新型インプレッサについても、同じ時期に東京・三鷹のスタジオを中心に先行開発を行い、さまざまなデザイン案を検討していたという。
「スバルの安全思想やお客様のワクワク感が詰まったカタマリから、ザクッと面を削り取る。薄皮で包まれたものを削ったら破れてしまいますよね。中身が詰まったソリッドなカタマリだからこそ、削り取れる。そんなイメージでいろいろトライしていたところ、ヴィジヴ 2で巧いアイデアが出た。ラグビーボールのようなボディサイドを削ぎ落としたら、ラインがV字になってダイナミックさも表現できる」と石井部長。