スバル、トヨタ上方修正 中間決算会見−2020

最終更新日:2024/06/26 公開日:

国内自動車メーカーの主力市場、米国の新車販売が復調しスバルやトヨタが業績予想を上方修正した。コロナ禍の打撃を受けにくい富裕層を中心に、SUVなど大型車の需要が戻ってきた。だが、経済格差という社会問題が色濃く反映された「K字型回復」にどこまで頼れるかは不透明だ。

「(2021年3月期の連結営業利益の見通し)通期5000億円を、第2四半期(7~9月期)だけでたたき出した」。トヨタ自動車の豊田章男社長は11月6日、4~9月期の中間決算会見でこう語った。中間決算に姿を現すのは09年の社長就任以来初。「(出席したのは)コロナ禍という有事だから。第3~4四半期も頑張っていくという決意をお伝えしたかった」と語る。

4~6月期の不振から一転、業績が回復したのは、コロナ禍による落ち込みから比較的早く持ち直した中国市場に加えて、北米市場が復調した影響が大きい。3月にニューヨーク州などが実施したロックダウン(都市封鎖)以降、店舗での対面販売が難しくなり、4~6月の米国の新車販売台数は前年同期比33%減の298万台にとどまった(米オートモーティブニュース調べ)。その後米国社会が徐々に落ち着きを取り戻し、需要は回復。7~9月の販売台数は同9.5%減の393万台だった。独調査会社スタティスタによれば、9月単月では、販売台数が前年を上回るなど本格的な回復の兆しを見せている。

トヨタ自動車の豊田章男社長は2009年の就任以来初めて中間決算会見に姿を現し、業績回復をアピールした

■米富裕層の消費意欲が回復か

市場の復調を受けトヨタなど国内の自動車各社は通期の業績見通しを相次いで上方修正した。トヨタは営業利益の通期見通しを期初の5000億円(前期比80%減)から1.3兆円(同46%減)に大幅に引き上げた。

注:各社の数値は11月6日時点、▲はマイナス。黄色枠内は上方修正をした会社

注:各社の数値は11月6日時点、▲はマイナス。黄色枠内は上方修正をした会社

「主力の北米は想定よりも早い回復基調にある。9月と10月の米国の小売販売は過去最高だった」。北米市場が販売台数の6割を占めるスバル(SUBARU)の中村知美社長は11月4日の中間決算会見でそう述べ、営業利益の通期見通しを期初の800億円(前期比62%減)から1100億円(同48%減)に引き上げた。

米国販売の伸びをけん引するのが、比較的単価が高く、利益率も高いピックアップトラックや多目的スポーツ車(SUV)などの大型車だ。トヨタはSUVの「RAV4」やレクサスブランド車などの販売が好調だ。在庫が逼迫しており、増産対応を急ピッチで進めている。マツダもSUV人気の追い風を受け「第2四半期は想定以上の復活」(藤原清志副社長執行役員)という。

20年7~9月の最終利益は40億ドルの黒字となった米ゼネラル・モーターズ(GM)でもピックアップトラックやSUVの販売が伸びた。電話会見でメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は「需要は引き続き堅調で生産能力を増やす必要がある」と述べた。

米国市場の回復について、三井物産戦略研究所産業情報部の西野浩介室長は「コロナ禍で抑えられていた需要が一気に解放された。新型コロナによる経済的な影響を受けづらかった富裕層を中心に消費意欲が回復している」と指摘する。

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