スバルのモーター用ECU、古野電気の気象レーダー――日本企業の開発事例が注目集める
National Instruments(ナショナルインスツルメンツ/以下、NI)のテクニカルカンファレンス「NIWeek 2014」の基調講演2日目では、NIの製品を用いた開発事例が紹介された。日本メーカーでは富士重工業のモーター用ECUの検証システムや、古野電気の気象レーダーが紹介され、おおいに注目を集めた。また、「Cyber-Physical Systems」を実現するプロジェクトとして、“スマートツール”で航空機を組み立てる、Airbus(エアバス)のスマート工場のコンセプトも発表された。
2014年8月4~7日にかけて、National Instruments(NI)のテクニカルカンファレンス「NIWeek 2014」が米国テキサス州オースチンで開催された。基調講演2日目も、1日目に続きNI製品を採用した開発事例が紹介された。
ECUの評価時間を大幅に削減
世界中のNI製品ユーザーが講演する中で日本企業として、まず富士重工業が登壇した。同社は、ハイブリッド車「SUBARU XV HYBRID」に搭載するモーター用ECUの検証システムにNI製品を活用した。具体的には、NIのグラフィカル開発ツール「NI LabVIEW」と、FPGAを搭載する計測/制御ハードウェア「NI FlexRIO」などでHILS(Hardware in the Loop Simulation)システムを構築している。
HILSシステムを構築する上で大きな課題の1つが、ループレート(制御レート:シミュレーションの時間分解能)だった。登壇した富士重工業の森田知洋氏は、「ECUからの信号が非常に高速なことに加え、モーターは非線形なシステムである。これらを厳密にシミュレーションするために、HILSシステムでは1.2μsのループレートが必要だった」と説明する。そこで富士重工業は、FlexRIOに搭載されている最先端のFPGA(Xilinxの「Kintex-7」)に演算を実装することで、1.2μsのループレートを実現することができたという。HILSコントローラでは、一般的にFPGAではなくCPUを採用しているものが多い。だが、「マイクロ秒オーダーのループレートを実現するには、CPUではとても演算処理が間に合わない」(日本ナショナルインスツルメンツ)。富士重工業にとって、演算処理能力に優れたFPGAを搭載したFlexRIOは、HILSシステムを構築する上で大きなポイントになったという(関連記事:スバル「XV HYBRID」のハイブリッドシステム、開発にNIの「LabVIEW」などを活用)。
森田氏は、「当初、ECUの評価には(実機を使ってテストを手作業で行った場合)2400時間を想定していた。LabVIEWとFlexRIOで構築したHILSシステムの導入によって、それを118時間と、約1/20に短縮することができた」と語った。
ゲリラ豪雨を予測する気象レーダーの開発にも採用
魚群探知機で知られる古野電気は、気象レーダー2機種の開発にNIのLabVIEWとFlexRIOを活用した。この気象レーダーは古野電気が2013年8月28日に発表したもので、主にゲリラ豪雨などを予測する。2機種のうちの一方は、6秒間隔で360°方向に50m区分の降水強度を探知することができる。これにより、積乱雲の構造を高精度に分析して、雨雲の移動や雨粒の発達を観測できるという。
古野電気は気象レーダーの信号処理装置にNI製品を用いた。従来の設計手法では、この部分は基板設計、HDL(ハードウェア記述言語)を使ったFPGA向けのコーディング、C言語などによるCPU向けソフトウェアのコーディングといった作業を含むカスタム設計で対応していた。信号処理装置をFlexRIOで構成することで、一連の設計を同一プラットフォームで行うことができ、HDLもC言語も使用する必要もなくなったので、システムの統合と最適化にかかる時間を約40%短縮することができたという。
“革新的なプロジェクト”に選ばれる
なお、上記2社の事例はいずれも、NIのソフトウェア/ハードウェアを採用した最も革新的な開発プロジェクトとして、2014年の「NI Engineering Impact Awards」を受賞している。