SUBARUに学ぶ顧客起点マーケティング3
検索数をKPIに、線引きやエリア・局ごとの最適化に取り組みました。
メディアバイイングは、タイムCM(個別の番組スポンサーとして放送するテレビCM)からスポットCM(番組を指定せず放送するテレビCM)に移行し、検索数をKPIに、線引きやエリア・局ごとの最適化に取り組みました。
長:先ほどWHO/WHATの話が出てきましたが、明確にしたことで、ほかに以前と変わった点はありますか?
安室:広告代理店さんなどから、オリエンが明確だから進めやすくなったという声をいただいています。テレビCMを作る際も「このような方向性で考えているから、安全や女性、子供を出してほしい」と明確に伝えると、クリエイティブディレクターさんや監督さんがそこからクリエイティブでジャンプしてくれるんですよね。
たとえばインプレッサのCMでは運転中のお母さんに向かって子供が「水筒忘れた」というシーンを描いていますが、この「水筒忘れた」の一言が刺さっている方が多いようです。よくあるシチュエーションなのでしょうね。ディーラーの現場や出張試乗会でも「あの『水筒忘れた』のCMの車ですよね」と口にする女性がたくさんいらっしゃいます。
長:これは非常に重要なポイントですね。WHO/WHAT、つまり「顧客戦略」がわかると、実は施策(HOW)が圧倒的に作りやすくなります。顧客戦略は、パートナーや広告代理店にとっても「効果的な施策」をつくる土台になるわけですね。
過去のテレビCMと比べ、最大14.5倍の指名検索量に
長:取り組みの手ごたえはいかがですか。
安室:クリエイティブについては、過去のテレビCMと比べて最大14.5倍の指名検索を獲得しています。
現在はNPIと指名検索を指標としていますが、副次的に好感度も同時に上昇する現象が起きています。インプレッサは、飲料や消費財などを含む全業種で2番目の指名検索数を獲得し、藤井隆さんのテレビCMと共にCM好感度ランキングでも上位ランクを獲得しました。
安室:また全国のディーラーでは、プリクラッシュブレーキシステム(追突の危険がある際、警報や自動ブレーキが作動するもの)の体験試乗を、自然にお客様にお勧めする流れが生まれ、体験するためのスポンジバリアが欠品することもありました(笑)
「これまでと異なる顧客層が来店している」「競合車が変わってきた」との声が、全国のディーラーから聞こえています。
長:顧客起点マーケティングを推進するにあたり、どのようなKPIを設定し、評価を行っていますか?
安室:大きく分けて「心理」と「行動」の2つのKPIを見ています。主に心理で見ているのは、安全訴求したことでイメージがどれだけ向上したのかを見ています。一方、行動には多くの指標があるのですが、9segs®以外にも、たとえばテレビCMでは検索数のリフトをKPIに。好感度はKPIとして見ることを止めました。
結果として、好感度アップを狙っていた過去のCMと今の安全訴求のCMでは検索量に大きな違いが見られます。お客様に響くCMだからこそ心が動き、検索をしているのでしょう。しかもただ検索量が増えただけでなく、効率化も進んでいます。戦略を変えた2023年4月と比較すると1検索リフトあたりの単価は半分ほどに。つまり効率が2倍になりました。
安室:また、実際、店舗にいらっしゃる新規のお客様の数も毎週のように2022年を超えているほか、CMの好感度も高くなっているというデータもあります。好感度アップを目指して作っているわけではないですが、結果として好感度もアップしていることがわかります。
こうしたことが積み重なり、販売台数も増え、前年を超える実績が出ています。
長:顧客戦略でWHO/WHATを決めると美しい理由は、色々な施策がそのWHO/WHATに基づいて作られるからということがあると思います。テレビCMも車そのものも、ディーラーにおけるデモも含めて、同じCX(顧客体験)を提供できれば、少ない予算で大手に勝つこともできるでしょう。
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