レヴォーグSTIスポーツが人気を博している

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レヴォーグに新たなグレードとして今2016年6月に設定された「レヴォーグSTIスポーツ」が人気を博している。ベースモデルから約40万円高となる価格設定で、アルミホイールやマフラーカッターなど高級感とスポーティさを高めた専用の内外装品に加えて、足回りには専用チューニングされたビルシュタイン製のダンパーなどを採用したモデルだ。富士重工業広報部によれば「8月はレヴォーグの販売台数の約4割をSTIスポーツが占めた」。これは事前に予想していた以上だという

STI。クルマに詳しい人でなければ、何のことかまったくわからないかもしれない。その正体は、スバル・テクニカ・インターナショナルという組織だ。1988年、スバルのモータースポーツ活動を統括するために設立された富士重工業(2017年4月からSUBARU)の子会社で、モータースポーツ用ベース車両や競技専用部品の供給、チューニング技術を応用した特別仕様車の企画・開発などと行っている。

スバルは1990年から2008年まで、WRC(世界ラリー選手権)に出場し、1995年から3年連続でマニュファクチャラーズチャンピオン(製造者部門王者)に3年連続で輝いている。この快挙を成し遂げたのがSTIだ。

 

つい最近発売されたWRX S4 tSの価格は496万8000円で、昨年発売されたWRX STI特別仕様車、S207の599万4000円より安く(ベース車両の価格差は約45万円)、2ペダルなので幅広いユーザーを取り込める。

ただしいずれも生産台数や期間は限られている。STIのコンプリートカーは発売後すぐに完売になることで有名なのに、台数を増やさないのは、STIの生産キャパシティと関係があるそうだが、知名度アップに対しては足かせだったかもしれない。



予想以上の反響を得たレヴォーグSTIスポーツ

そこで今年登場したのが、Sシリーズ、tS、WRX STIに続く第4のSTIとして、6月にレヴォーグに設定されたSTIスポーツだ。予想以上の反響を得た理由のひとつとして富士重工業広報部が挙げていたのは、「従来のSTIと比べた場合の敷居の低さ」である。

現行WRXは2ペダル仕様をS4という別の車種にしており、WRX STIはラリーのベースモデルという位置付けもあってMT車のみだ。tSはコンプリートカーゆえ価格が高めとなっており、Sシリーズはさらに上を行く。

一方のレヴォーグSTIスポーツは、STIが生産を担当するコンプリートカーではなく、スバルの工場でライン生産しているのも、ベースモデルから約40万円高に収まっている理由であろう。よって生産台数の制限もない。

実車に接してまず感じたのは、STIが当初から大事にしている大人っぽさだ。いわゆる体育会系のいでたちではなく、大径アルミホイールやマフラーカッターなどで迫力を加えつつ、落ち着いた佇まいも実現している。象徴的なのはインテリアで、渋いボルドーとブラックの2トーンインテリアは、プレミアムという言葉が浮かぶ上品な仕上がりだった。



STIスポーツは乗り心地も改善されている

レヴォーグにあまり良い印象を持っていなかった。ボディサイズは日本の道でも持てあまさず、バージョン3となったアイサイトは最新の運転支援システムに劣らぬ完成度だった。しかし乗り心地は硬く、小刻みな揺れが絶えなかった。長距離を快適に移動するというワゴンらしいシーンには不釣り合いだと感じた。

STIスポーツはその点がしっかり改善してあった。硬めであることは同じだが、鋭いショックを絶妙にいなしてくれるので、不快に感じない。ハンドリングも反応の鋭さは抑えられ、自然な身のこなしになっていた。エンジンのノイズが抑えられたことも手伝って、ボルドーを配したインテリアにふさわしい乗り味を提供してくれた。

富士重工業広報部によれば、「レヴォーグSTIスポーツは、高級なレヴォーグとして買うユーザーが多い」。おそらくスバルのもくろみもそこにあったはずだ。メルセデス・ベンツのAMGからフィアットのアバルトまで、かつてスポーツイメージを売り物としていた輸入車ブランドは、いまや高級品として販売台数を伸ばしている

STIもその路線を目指して今回の車種を出し、成功に結びつけつつある。おそらく新開発プラットフォームを採用した新型インプレッサをはじめ、各車種にSTIスポーツが設定されることになるだろう。STIスポーツの知名度が浸透すれば、コンプリートカーのtSやSシリーズの存在感も引き立ち、STIブランド全体のイメージアップにつながるはずだ。

初代インプレッサのSTIバージョンあたりを乗り回していた硬派なクルマ好きは、「STIが堕落した」と感じるかもしれない。でもその考えでいえば、世の中のスポーツカーはすべて堕落している。そしてスポーツカーはブランドで売れる時代になりつつある。

ライドシェアが普及し自動運転が実現に近づく中で、自分の手足を動かしてクルマを操るスポーツカーの価値は、むしろ高まりつつある。さらに日本車にとっては、安くて壊れないという従来の位置付けから、いいものを高く買ってもらうという付加価値型モノづくりへの転換が急務となっている。

スバルは今年50周年を迎えた水平対向エンジンをはじめ、左右対称AWD、アイサイトなどによって、日本の自動車メーカーとしては付加価値で売るスタイルを確立しつつあり、利益率も高い。ただし新興国の自動車メーカーが力をつけつつあるのも事実であり、さらに上を目指す必要もあるだろう。

STIスポーツはその点でも、とても大事な役目を負っているような気がする。今後のスバルの行く末を語るうえで、STIの3文字は重要な鍵を握っているのかもしれない。

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