トランプ関税の逆風に立ち向かう——スバル大崎社長が語る「ブランド力」で勝負する戦略

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トランプ関税の逆風に立ち向かう——スバル大崎社長が語る「ブランド力」で勝負する戦略

2025年、日本カーオブザイヤーを受賞したスバル・フォレスター。しかし、華々しい受賞の裏で、同社は厳しい経営環境に直面している。北米市場への依存度が7割を超えるスバルにとって、トランプ関税は大きな打撃となった。営業利益が半減する中、大崎篤社長が示す「次の一手」とは——。

日本カーオブザイヤー受賞の裏にある技術革新

2025年1月4日、スバルの新型「フォレスター」が日本カーオブザイヤー2025-2026に選ばれた。審査員から高く評価されたのは、トヨタ自動車と共同開発した「ストロングハイブリッド」システムだ。

従来のマイルドハイブリッドと比較して、強力なモーターを搭載したストロングハイブリッドは、モーターのみでの走行が可能。燃費性能は従来比1.2倍、航続距離は1.5倍に向上し、発売後1ヶ月で受注が当初計画の4倍以上を記録する大ヒットとなった。

日本カーオブザイヤーを受賞したスバル・フォレスター




顧客の声:

  • 「700km走ってもガソリンが全然減らない」
  • 「加速がスムーズで、乗っていて楽しい」
  • 「安全性能の高さが決め手。アイサイトは絶対おすすめ」

スバル独自の水平対向エンジンと4輪駆動システム「シンメトリカルAWD」に、トヨタのハイブリッド技術を融合させることで、「走る楽しさ」と「環境性能」の両立を実現した。


深刻な業績悪化——トランプ関税が直撃

しかし、華やかな受賞の裏で、スバルの業績は厳しい状況に置かれている。

2024年度中間決算(概要):

  • 売上高:2兆円超(前年同期比+1,195億円)
  • 販売台数:47万3,000台(+2万3,000台)
  • 営業利益:1,027億円(前年比で半減

売上・販売台数は伸びているにもかかわらず、営業利益が大幅に減少した理由は、トランプ関税だ。

2025年4月、米国は自動車輸入関税を従来の2.5%から一気に27.5%に引き上げた。その後、日米政府の交渉により9月に15%へ軽減されたものの、依然として大きな負担となっている。

「昨年は営業利益で4,400億円を稼ぎ出していたのが、今回の見通しでは2,000億円。主に関税影響で半分を失っている」(大崎社長)

スバル大崎篤社長








北米市場への高い依存度がリスクに

スバルの世界販売における北米市場の比率は71%。さらに、車種別ではSUVが83%を占める。「選択と集中」の戦略で北米SUV市場に注力してきた結果、関税リスクが一気に顕在化した形だ。

現在、スバルは北米販売の半分を現地生産、半分を日本からの輸出で賄っている。この体制は為替リスクを分散する目的だったが、関税という新たな変動要素が加わったことで、現地生産の拡大が課題となっている。

「単独では簡単に決断できない。サプライヤーの皆さんと一緒にどうするか検討している最中です」(大崎社長)

工場建設には膨大な投資と時間がかかる。短期的な解決策は見えにくい状況だ。


価格転嫁は困難——カギは「ブランド力」

関税負担を価格に転嫁できれば利益率は改善するが、現実は厳しい。

「市場の中で他社と競争している。関税が上がったから簡単に価格を変えるのは難しい」(大崎社長)

そこでスバルが打ち出した戦略が、「ブランド力の強化」だ。

  • 商品価値に見合った適正価格の維持
  • 原価削減の徹底
  • 販売台数の拡大
  • バリューチェーン全体での収益向上

スバルのブランド戦略イメージ

技術だけでなく、「パフォーマンス」「アドベンチャー」といった柱を立て、顧客との絆や共感を強めることで、「スバルだから買う」という付加価値を高める戦略だ。


電動化戦略の軌道修正——エンジン車の延命へ

当初、スバルは1.2兆円規模の投資を電動化に充てる計画だったが、これを見直した。

変更のポイント:

  • EV中心 → ハイブリッドや次世代エンジン車へシフト
  • バイデン政権下で導入されたEV購入支援策が撤廃され、環境規制も緩和
  • EV需要の伸び悩みを受け、エンジン車の開発を強化

大崎社長はこう語る。

「カーボンニュートラル社会の最終的な解はバッテリーEVだと思っているが、その間をエンジン中心の商品で埋めていく」

一方で、水平対向エンジンを強みとするスバルにとって、エンジン車の需要延長は追い風でもある。

「バッテリーEVになっても、スバルらしさはきちんと出していける自信がある」(大崎社長)

EVでも「スバルらしさ」は守れるか

「水平対向エンジンのないスバル車」は想像しにくい——そんな疑問に対し、大崎社長はこう答える。

「バッテリーを低く配置すれば低重心は実現できる。4WD技術もEVでより活きる。何より安全性能は我々の最大の売り。EVになっても変わらない」

バッテリーEVは車両重量が重くなるため、衝突時のエネルギーも大きい。だからこそ、スバル独自の安全技術「アイサイト」の価値はさらに高まるという。

スバルの次世代EVコンセプト









柔軟な生産体制で変化に対応

スバルの強みは、「小規模メーカーならではの柔軟性」だ。

柔軟性を支える仕組み:

  1. 混流生産:1つのラインでEVとエンジン車を生産可能
  2. ブリッジ生産:日本と米国で同じ車種を生産し、需要変動に応じて配分を調整
  3. プラットフォーム共通化:エンジン車とEVで共通の基盤を使用
「これが我々のような小さい規模のOEMの勝ち筋です」(大崎社長)

おわりに——ブランドを磨き、逆風を超える

グローバル競争が激化する自動車業界で、小規模メーカーは淘汰されるのではないか——そう言われた時代もあった。

しかし、大崎社長は明確に答える。

「ブランドをいかに磨いていくか。技術で商品を際立たせ、パフォーマンスやアドベンチャーといった柱を立て、スバル全体のブランドを上げていく」

トランプ関税という逆風が続く2025年。スバルは「走る楽しさ」「安全性」「環境性能」を高次元で融合させた商品力と、柔軟な生産体制で、厳しい時代を乗り越えようとしている。

「スバルだから買う」——そう言わせるブランド力を、どこまで磨けるか。それが、スバルの未来を決める。


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