スバル人:SUBARUびと ストロングハイブリッド開発秘話1
様々な部署で働く「SUBARUびと」 仕事内容や職場の雰囲気を交えてご紹介。
今回は、2024年12月に発表予定のクロストレックに新搭載される「ストロングハイブリッド」の開発に携わるメンバーインタビューをご紹介。
高い視点で開発を取りまとめ、エンジニアが開発に打ち込める環境づくりを志す
SUBARUびと:加藤 信英(かとう のぶひで)さん
2015年中途入社。大学院では情報工学を学び、制御工学に関する研究を専攻。前職ではトランスミッション制御全般の開発業務を担当。SUBARUに入社後、リニアトロニック(CVT)の実車適合業務を担当し、関連する車両性能の開発にも携わる。
2023年より、「ストロングハイブリッド」の開発に従事する。
電動車ならではのパワーユニットの制御をとりまとめ
加藤:私は「ストロングハイブリッド」(以下、SHEV)の開発において、2.5L水平対向エンジンとトランスアクスル*1からなるパワーユニットの制御開発をとりまとめました。
トランスアクスルは、従来のエンジン車 および 従来のマイルドハイブリッド車(以下、MHEV)に搭載されていたリニアトロニック(CVT)とは全く構造が異なるため、様々なチャレンジが求められました。
*1:駆動用と発電用の2つの高出力モーター、フロントデファレンシャルギア、電子制御カップリングをワンパッケージ化したユニット。「トランスミッション」と「アクスル」を組み合わせた造語。エンジンの駆動力とリア・アクスルを円筒で包んだドライブシャフトでつなぎ合わせた駆動レイアウトを意味し、安定性抜群のシャシー、マナーを実現したこのコンセプトは、電気制御のない時代にとって革新的なもの。
ーお客様に満足いただける走行性能を追求
加藤:私の役割は、定められた開発期間の中でパワーユニットに関する目標性能が実現できるよう、各部門の開発進捗をコントロールしながら、課題があれば間に入って解決するという役割を担いました。
特に調整が難しいのは、
自分の部署内だけでは解決が難しい課題に直面した時です。例えば、エンジン担当とトランスアクスル担当がそれぞれにとって最適な開発をしていても、クルマ1台の視点で見た時には、それが必ずしも最適とは限らないんです。
そんな時には私が間に入り、より高い視点をもって「こういう進め方にしましょう」とファシリテートしています。時には、ブレーキ担当や足回り担当、動力・ドライバビリティ担当といったパワーユニット以外の開発メンバーとの協働が求められるケースもあったので、こまめな情報共有を欠かさず進めていきました。
とりまとめていくうえで心掛けたのは、困りごとを相談されたときは真摯に対応するということです。
また、うまく開発が進んでいないものがあれば、自ら積極的に話を聞きに行くようにもしました。いざ話を聞いてみると、自分たちだけでは解決できない課題に直面し「どうしたらいいんだろう」と悩んでいることも多くありました。
パワーユニットは、加速性能や燃費性能をはじめとするお客様からの注目度の高い性能を司る部分です。少しでも多くのお客様に満足いただける商品にするために、取りまとめ役である私がどんどん踏み込んで各部署間の調整を図ることで、エンジニアの皆さんが開発に集中できる環境づくりを大切にしてきました。
ー課題を解決してたどり着いた性能を体感してほしい
加藤:今回のSHEVはMHEVよりも大きなモーターを搭載していますので、普段使いにおける発進加速や登り坂での登坂性能など、幅広いシチュエーションで力強い走りを体感できます。加えて、2.5Lという少し大きめのエンジンを採用したことで、SUBARUらしい「走りの愉しさ」とワンランク上の「快適な走り」を実現していますので、アウトドアなどでのアクティブな使い方にもしっかり応えてくれます。
SHEV開発の中で1つ課題になったのは、トランスアクスルから生じる音です。
SHEVはモーターだけで走行するEV走行の領域がMHEVよりも拡大されたことで、従来よりも大幅に静粛性が高まっています。ですがその一方で、従来のリニアトロニックとは構造が異なることで発生する音もあり、それが乗員にとって不快に感じさせる恐れがありました。
静かな車内空間を実現することもお客様の期待に応える上ではとても大切ですので、振動・騒音担当やトランスアクスル担当のエンジニアが最後の最後まで作りこむことで、音の発生を抑制することができました。ここは実際に乗って、体感していただきたいです!
ー電動車の開発は難しいけど面白いー
加藤:私は元々リニアトロニックの開発部門にいましたが、電動車の開発に携わることで自身のスキルを磨き、会社に貢献したいという思いと、エンジニアの実務一筋ではなく、もう少し広い視野で開発に携わってみたいという思いがありました。そんな時に社内公募があったので、チャンスだと思って手を挙げ、今の部署に異動しました。
実際、新たな業務に携わってみると、従来のリニアトロニックから置き換わることで考慮しなければならない範囲はとても広く、難しさを感じた一方で、面白さも同時に実感しました。たとえ電動車であっても、走行性能や静粛性といったクルマの根本的な性能に対するニーズは変わりませんので、これまでの経験も十分に活かせるという手ごたえも感じています。今後はより電動車に関する知見を高められるよう、バッテリーEVの開発にも関わってみたいと考えています。