スバルは今好調なのか?:レガシィからみる今のスバル

最終更新日:2016/07/12 公開日:

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来年4月から社名を「スバル」へと変更する富士重工業。4年連続で過去最高益を更新している同社だが、2015年5月時点において自動車販売台数の国内シェアは5%、世界シェアはわずか1%とけっして高い数字ではない。こうした状況の中でも「スバルが伸びている」と言われる理由はどこにあるのか。プロジェクト・リーダーを務めていた内田雅之氏が語った「新型レガシィ」の開発秘話から、好調の秘密をひもといてみたい。




・今スバルは世界シェアが1%。それでもスバルは生き残っている理由

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2015年度における富士重工業の売上高は、前年度比12.3%増の3兆2323億円、当期純利益は66.7%増の4367億円で、4年連続で過去最高を更新した。しかし、 2015年5月時点でのグローバルなシェアを見てみると、スバルの販売台数は8766.6万台で、国内シェアは5%、米国シェアは3.3%、さらに世界シェアではわずか1%(FOURIN世界自動車調査月報調べ)とけっして高くない数字だ。

スバル・レガシィ開発のプロジェクト・リーダーを務めていた商品企画本部の内田 雅之氏(現:富士重工業株式会社 執行役員 スバル第一技術本部・第二技術本部副本部長)はスバル好調の理由を次のように説明する。

「スバルは伸びていますね、といわれるが、実はシェアは小さい。そういう企業でも生きていくためには、個性的な商品ラインナップが求められている。そこで我々は、グローバルの1%のユーザーに対して喜んでもらえる個性的な自動車づくりを考えている」

サラリーマンでも手に届くファミリーカーとして、約36万円という安さのスバル360が発売されたのが1958年のこと。これは、当時の一般的なサラリーマンの年収で購入できる価格帯であった。スバル360は、軽量で運動性能を向上しつつも、規格のない段階から衝突安全試験を実施して安全性を追求した自動車だった。

このようなDNAは現在でも継承されており、実際に2014年の中期経営ビジョンでは「2020年に向けて、お客様の心の中で“際立つ”存在に」をスローガンに、大きくなくてもよいが強い個性的を持ち、質の高い企業を目指すことを宣言。さらにスバルブランドを磨き、強い事業構造を創ることを目標に掲げた。

・打ち出した個性

スバル・レガシィは、これまでに25年の歴史を重ねて、人々に愛されてきた。内田氏は1989年から、レガシィの全世代に関わってきた人物である。初代レガシィは主として走りを追求し、連続10万km走行の平均スピードでワールドレコードを樹立。1993年にニュージーランドで開催された「WRC」(World Rally Championship)で初優勝してから2008年までの16年間にわたり、多くの名場面を創り出してきた。

また1999年には、すでにステレオカメラ、いまでいうところの「アイサイト」を搭載していた先見性も光る。2003年の4代目には、自動車の開発者なら誰でもあこがれる「カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。このようにレガシィは、世代ごとに少しずつ商品のカラーを変えて進化してきた。

「走りを中心に追及していた初代のレガシィも、徐々にスタイリングに力を入れ始め、後半になってSUVの方向に変わってきた。3代目まではワゴンの名残があったが、2009年以降はアウトバックが中心になってきた。そして次世代のレガシィをどんな自動車にするのか? それが私のメインの仕事になった」(内田氏)




2010年から開発企画の責任者を任された内田氏は、単に前の改良型の自動車ではなく、新しい自動車をデザインすることを決意した。いろいろと悩みながら、マーケティングなどを使ったりしたが、やはりどうしても最後の一手に行きつかない。そこで企画の現場である米国のユーザー宅に直接訪問して、インタビューを決行したという。そこから同氏はさまざまな知見を得られた。

「スバルの名前は伏せて、ヒアリングをお願いした。あるユーザーは、家族旅行で車体が大破する事故を起こしてしまったが、かすり傷で済んだという。アウトバックはとても安全で、事故にあっても大丈夫だったと自慢してくれた。また、あるユーザーはアウトドア派で、山道の雪雨でも安心して帰宅できるのはスバルのおかげ、と高く評価してくれた。読書会を趣味とするユーザーは、移動時にどれだけ荷物を積めるのかがポイントになったという。一般の主婦には、走りも燃費もよいと褒められた」(内田氏)

このようなヒアリングによって、スバルは信頼性、実用性、走りの良さ、低重心・低金属、荷室容量、AWDの点が評価されていることを理解できたという。聞き取り結果を踏まえて、さらにユーザーの使い勝手を向上させるような新たなレガシィにチャレンジすることになった。

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