【試乗記】「これまで通り、前人未踏の地を走破し続ける」2015年型 スバル「アウトバック」・・・By Steven J. Ewing 翻訳:日本映像翻訳アカデミー 監修:日下部 博一

最終更新日:2016/02/12 公開日:

「我々は違いのあるクルマを製造したい」。これは、何人かのスバル役員が2015年型「アウトバック」のお披露目で高らかに宣言していた言葉である。アウトバックは富士重工業が世に送り出したクルマの中でも最も成功した車種の1つだ。

Autoblog編集長のジェレミー・コルゼニースキーが「レガシィ」の試乗記で正確に述べているように、スバルは本流となるべきセダンの販売に悪戦苦闘している。しかし一方で、アウトバックや、インプレッサをベ-スにした「XV クロストレック」(日本名:「XV」)のような4輪駆動のCUVが売上の花形となっている。たとえば、2013年はレガシィ1台が売れる間に、アウトバックは約3台のペースで売れた。また、2014年は、今までのところ、XVがベースとなったインプレッサを凌ぐペースで売れている。

スバルの車というのは、今までも他とは違っていた。ありきたりのセダンやクロスオーバーより特別なクルマを望んでいるユニークな顧客の希望に応じてきたのである。こういった販売戦略は成功した。この原稿を書いている時点で、30カ月連続で前年同期比を上回る販売台数を記録している。スバルは従来の不格好だったスタイリングを向上させて主要ブランドの仲間入りさえ果たした。米国で大きなマーケットシェアを狙うほどになった。しかし、相変わらず、スバルの本質である他との違いは、全てのプロダクトに刻まれている。

今回の試乗記でお伝えする新型のアウトバックは、2014年4月のニューヨーク国際オートショーで2015年型モデルとして発表された。全体的にデザインが変更されてはいるが、1990年代中頃からスバルに成功をもたらしてきた形式を大幅に変えたりはしていない。当時、アウトバックは(まず間違いなく)今日でいうところのクロスオーバー・ユーティリティという新しいセグメントを最初に築いた(日本では1995年に「レガシィ グランドワゴン」として発売)。2015年型にも他のクルマと違う点がたくさんある。そして十分に素晴らしいクルマだ。

新型アウトバックのスタイルには過激なところが全くないが、それでも全てが新しくなった。以前より不格好さが薄まり、デザインがより洗練された。滑らかな形になり、ヘッドライトやグリル、テールランプなどのバランスが改善された。その全てが功を奏して、全体としてたくましく美しい仕上がりとなっている。それでも、大型フォグランプやルーフラックを装着した厚いグレイのボディの下に、レガシィがあることは明白だった。しかし、ほとんどの顧客は分からないだろうし、気にしないだろう。その上、スバルは常にアウトバックらしく仕上げるための優れた仕事をしてきた。家族向けのセダンがルーツにあるなんて気にすることはない。この車のデザインがレガシィに何かをプラスした程度だという印象を与えたとしても、どうでもいいことだ。アウトバックとレガシィが、多くを共有する2種類のクルマとして並べて開発されたことは、兎にも角にもはっきりしている。

アウトバックの車高が引き上げられ、頑強なデザインとなったことは、すべて機能性を追求した結果だ。最低地上高が8.7インチ(約221mm)というのは、どのライバル車よりも高い。我々はかなり荒れたオフロードで試乗したのだが、この地上高は本当に有益だということが分かった(この件については、後ほど詳しく述べよう)。 新型アウトバックのサイズは、先代と比較してもそれほど大きくなっていない。スバルの説明によると、先代で「適切なサイズ」を見極めたからだという。全長が0.6インチ(約15mm)、車幅が1.3インチ(約33mm)拡大した。しかし、車高はかなり高くなっている。先代アウトバックの63.9インチ(約1,623mm)に対し、新型は66.1インチ(約1,679mm)。最低地上高は変わっていない。また、アウトバックは2015年型も17インチもしくは18インチのアルミホイールを装備している。車幅が拡がり車高が高くなったおかげで、室内スペースが2014年型の2985ℓから3061ℓに拡大した。


室内に目を転じると、ここではレガシィとアウトバックの違いが完璧に消えているのが分かる。インテリアは、良くも悪くもレガシィそのものである。レイアウト、カラー、操作系、素材の全てがレガシィから引き継がれた。コルゼニースキーはレガシィの試乗記で「使われている素材は高品質で、キーキーときしむ音やガタガタといった音はまったく聞こえてこない」と書いていた(スバルはアウトバックについて「最高品質のフェイク・ウッドを使っている」と言っている)。また、「すべての操作系は論理的に配置され」、「ドライバーが触れる部分は全て心地よく感じる」と言っている。アウトバックに関しても、何一つ意義を申し立てるつもりはない。付け加えておきたいことは、室内が非常に広いと感じたことだ。前席も後席も、頭上、足元、肩、腰まわりには十分な空間があった。ゆったりしていて、合理的で、はっきり分かるほど品質も高いということである。しかし、新しいダッシュボードをスタイリッシュだと言う人はいないだろうし、デザインが特にモダンだと言う人もいないだろう。

だが、デザインがもうひとつではあっても、アウトバック(そしてレガシィ)の新しいインフォテイメント・システムのインターフェイスについては褒めるべきだろう。7インチのタッチスクリーン式液晶画面は、ベース・グレードの「2.5i」を除く全車に標準装備されている。ついにスバルも、直観的に操作できて見栄えも新しくて現代的なシステムを開発したのだ。この点が従来のモデルでは常に弱かったのだが、新型は申し分ない。さらなる褒め言葉は、最高にラブリィなサウンドを聞かせてくれるオプションのハーマンカードン製オーディオ・システムと、スバルの衝突回避システム「アイサイトver.3」に贈りたい。我々はこれを実際に試してみることができたが(もちろん、コントロールされた環境の中で)、時速30マイル(約48km/h)で、ドライバーが全く関与せずにクルマは完全に自動停止した。

アウトバックがレガシィよりさらに機能的な点は、もちろん、車体後部にある。ワゴン型ボディはフラットにたためる後部座席のおかげで、2076ℓという非常に広い荷室スペースを作り出すことが出来る。先代より約56.6ℓの増加だ。上位グレードには、開けた時の高さをプログラムに記憶させておける電動リフトゲートが装備されている (小柄なドライバーや天井の低いガレージの場合、便利に使えるだろう)。また、アウトバックには全てのモデルに一体型のルーフレールが標準装備されており、未使用時にはクロスバーをルーフレール内に格納することができる。


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ボンネットの下は、やっぱり全てレガシィである。2.5リッター水平対向4気筒エンジンまたは3.6リッター水平対向6気筒エンジンが、レガシィからそっくりそのまま引き継がれている。2.5リッターでは、最高出力175hp、最大トルク24.0kgmを発生。3.6リッターエンジンは悠々と最高出力256hp、最大トルク34.2kgmを発揮する。どちらのエンジンもトランスミッションはリニアトロニックCVT(自動無段変速機)が組み合わされるが、3.6リッターの方ではWRXでも使用されている高トルク対応型CVTとなる。このユニットは、各シフト・ポイントにプラネタリギアを使った一般的なATと比べても、ギア比の設定はかなり良かった。他のCVTのようにパワーバンドの中でダラダラしている感じがない。

どちらのエンジンも非常に優秀で、6気筒エンジンはかなりパワフルだった。しかし価格のことを考えると、筆者なら2.5リッター・モデルを購入するだろう。4気筒エンジン搭載モデルは、仕様によるが、3.6Rリミテッドより80kgから98kgは軽い。重量を軽減できるというのはいいことだ。というのは、ベース車の2.5iでさえ、車両重量が1,630kgあり、先代より77kgも重くなっているからである。また、6気筒エンジンは、「リミテッド」グレードしか用意されていない。6気筒のパワーが本当に必要だと考えるのであれば、その他の装備にも余計にお金を払わなければならないことになる。2.5リッター搭載モデルの軽さは、運転してみれば操縦性という面で感じることができる。そしてご想像のとおり、小さいエンジンの方が燃費にも優れている。2.5リッター・モデルの燃費は、市街地走行で25mpg(約10.6mk/ℓ)、高速走行が33mpg(14.0km/ℓ)。ところが 3.6リッター車では、それぞれ20mpg(約8.6km/ℓ)と27mpg(約11.5km/ℓ)に留まる。燃費効率は購入者にとってかなりの不利益だ。

もちろん、3.6Rは2.5リッターに比べれば、路上では元気がよい。スバルによれば、3.6Rの0-60mph加速は7.3秒で、これは2.5iより2秒速い。しかし、どちらのエンジンを搭載していても、アウトバックの運動性能は驚くほど素晴らしいと言える。電動式となったパワー・ステアリングは、中立付近でやや反応が鈍いものの、充分なフィードバックを伝えるよう適切に調整されている。この操作性のよさを助けているのが、16:1から14:1に速められたステアリング・ギア比だ。WRXのように鋭く曲がれるわけではないが、それはクルマの性格からすれば当然意図されたものだ。それでも想像していたよりはるかに良かった。

2015年型アウトバックはねじり剛性が59%、曲げ剛性が35%向上している。サスペンションは伝統的なフロントがマクファーソン・ストラット式で、リアがダブルウィッシュボーン。コーナリング時の全体的な安定性は劇的に向上したとは言えないが、それでも少しは改善された。重心が高いため相変わらずロールはする。しかし、アウトバックのミッションを考慮すれば、非常識と言うほどではない。スバルのシンメトリカルAWDは、常にその作動が意識されないほど素晴らしく、完璧に最大のグリップを4輪にもたらす。旋回時に内側前輪に制動を掛ける「アクティブ・トルク・ベクタリング」(WRX STIのものがベースになっている)も称賛に値する。未舗装の砂利道を高速で走ったときでさえも、横滑りをすることなどなく(我々があえて試したかどうかは別にして)、高い安定性と自信に満ちた走りが感じられた。アスファルトの路面では、競合車よりもアウトバックはスムーズで、信頼の置ける走りと優れた運動性能を見せた。ヒュ ンダイ「サンタフェスポーツ」やフォード「エッジ」、トヨタ「ヴェンザ」または、ホンダ「クロスツアー」といった2輪駆動のCUVより、アウトバックのステアリングを握りたいと思った。

このジャンルに属するCUVの大半は、オフロードを走破できる格別な性能を持ち合わせているわけではない。しかし、アウトバックは本当にそれらから抜きん出ている。フォレスターで初採用された「X-MODE」システムのおかげで、無理だろうと思われた最悪の地形も走破することができた。傾斜のきつい丘、深いわだち、大きな岩、泥の多い川を乗り越えたアウトバックには、本当に驚かされた。この試乗記の冒頭で述べた8.7インチ(約 221mm)の最低地上高(ジープの「グランド・チェロキー」のデフォルトの設定と同じ)は、本当に信頼がおける設計だったのだ。もちろん、ジープのようなSUVの方が、こういった厳しい環境ではいい仕事をするに違いないし、さらに本格的なオフロード用車両から見たら、我々がアウトバックで攻略した地形など一笑に付するものかも知れない。しかし、そういった車は必ずしも、アウトバックほど収容力や燃費性能が優れているわけではない。そしてアウトバックの最高に素晴らしいところは、全てがワンタッチで操作できることだ。つまり、ボタンをひとつ押せば、制御システムの「X-MODE」がエンジンの出力を変え、CVTの最適なギア比を選択し、4輪駆動のロジックとトラクションコントロールの設定を適切に変更する。また、登り坂での発進時に後退を防ぐ「ヒルスタートアシスト」や、急な下り坂で速度を制御する「ディセントコントロール」が、本当に難しい状況に陥った時には、とても役立った。

このアウトバックが見せたオフロード走行における能力は、我々ジャーナリストに文章を書かせようとするだけのものではない。スバルから提供された、自動車業界向けのコンサルティング会社、J.D. Powerが作成したデータによると、スバルの車はジープとラムを除けば他のどのブランドよりも、オフロードで運転されることが多いそうだ。さらに同様のデータでは、スバル車のオーナーは他のクルマを購入する人たちより190%もアウトドアで活動しているという結果が出ている。我々はテストドライブの間に乗用車として使われているスバル車と何台もすれ違ったが、砂や泥で汚れ、ルーフにカヤックや自転車を載せているクルマがどれだけ多かったことか。したがって、提供されたデータに疑いの余地はないと思う(米国の西海岸北部がスバルの最も大きなマーケットだというのも、考えてみれば納得である)。

2015年型アウトバックのベース価格は、2万4,895ドル(約255万円)。輸送費は別途850ドル(約8万7,000円)がかかる。その金額を払えば、17インチのアルミホイールやX-MODE、スマートフォンと連携できる次世代車載情報システム「スバルスターリンク」の6.2インチスクリーンなど、ここに書き切れないほどの装備が標準で付いた「2.5i」が手に入る。その上の「2.5iプレミアム」では、フォグランプ、7インチのタッチスクリーン、左右独立温度調整機能フルオートエアコンなどが追加されて、2万6,995ドル(約277万円)。「2.5iリミテッド」になると、18インチのホイール、本革シート、電動リフトゲートが装備され、2万9,995ドル(約307万円)だ。そしてトップ・グレードの「3.6Rリミテッド」が、3万2,995ドル(約338万円)。これに写真でご覧いただいているようなオプションをすべて装備すると、3万6,835ドル(約378万円)になる。

我々は新型アウトバックがスバルに良い結果をもたらすと確信している。すでにスバルでは2番目に売れているモデルであり、さらにデザインが変更された2015年バージョンはあらゆる面で大きく改善されている。しかし、これまでのアウトバックの流儀は変えていないし、先代から大きく掛け離れてもいない。それで良いのだ。アウトバックは運転しやすく、アウトドアを楽しむために最適なところが人気だった。この新しいモデルは現行モデルの欠点に目を向け、なおかつアウトバックを成功に導いたポントを向上させている。従来のクルマとは違ったスタイルについて人が何と言おうと、その他と違っているところが素晴らしいのだ。

By Steven J. Ewing
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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