EV後発のスバルがEVスポーツを基盤にして挑む 吉と出るのか

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WRXS4:スバル車専用のSTI専用カスタムパーツ

SUBARU(スバル)のモータースポーツやカスタマイズ事業を手掛けるSTI(スバル・テクニカ・インターナショナル)が、スーパーEVスポーツ(電気自動車〈EV〉のスポーツカー)を世界初公開した。EVシフトがグローバルで急速に進む中、スバルのEV戦略の可能性について関係者に聞いた。(ジャーナリスト 桃田健史)

スバルのクルマは、世界的なEVシフトの大波を受けてこれからどうなってしまうのか?

 こうした声がスバルユーザーの間で一気に高まったのは、2021年11月11日にスバル初となる量産型EVの「SOLTERRA(ソルテラ)」が公開されたときだった。

「ソルテラ」の車体骨格、モーター、電池などEVとしての主要技術はトヨタ自動車に委ねられ、スバルが担当したのは四輪制御を行うX-MODEに限定されるという、トヨタ主導型のモデルである。

 スバルの中村知美社長は「事業の選択と集中」という言葉を使い、EV開発の基本的な考え方として、トヨタなど他社との連携強化によって、スバルの得意技である四輪制御の領域でとがった技術を開発することを目指すとしている。

 また、「ソルテラ」の予防安全技術では、スバルの真骨頂であるアイサイトではなく、トヨタのシステムが搭載されていたことについても、「これじゃ、スバルとは呼べない」という声がSNSなどで広まった。

 
 そうした中、カスタマイズカーの国内最大級イベントの東京オートサロン2022(22年1月14日~16日)では、STIがスーパーEVスポーツを世界初公開したことがスバルファンのみならず、自動車業界全体で大きな話題となっている。
STIはスバルの完全子会社で、「WRXI」を筆頭とする量産車のスポーツ性能を引き上げる技術開発や、「S209」などスバル車をベースとしたSTIオリジナル車も販売している。

 また、スバルに関わるモータースポーツ事業も担当しており、直近ではスーパーGT300や独ニュルブルクリンク24時間レースなどに参戦している。

 そのSTIが手掛けるEVが「STI E-RA CONCEPT」だ。RAとは、レコード・アテンプト(記録への挑戦)を意味する。前後の車軸にそれぞれ最大出力200kWのモーターを2基、合計4基モーターで全体の出力は800kW(1088ps)に達する。

 このスーパーマシンで世界屈指の難コースとして知られる、独ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北コース)で6分40秒を切ることを目指す。22年中に国内で試走を開始し、23年以降にドイツでのタイムアタックを狙う。

マシン開発を取り仕切る、STI新規事業推進室部長兼設計情報管理室部長の森宏志氏に詳しく話を聞いた。

 森氏によると、同コースでのEVのトップタイムは、フォルクスワーゲン「ID.R」の6分5秒だが、これはドライバーが1人乗車の単座席マシンだ。一方で、2座席のスポーツタイプでは、中国のNIO「EP9」による6分45秒がこれまでの最速だという。

 その上で、森氏は「“これからのこと”を念頭に、我々は2座席スポーツタイプでの世界最速となる6分40秒に目標を定めた」と説明した。

 
森氏が言う“これからのこと”には、大きく2つの意味が込められているように思う。

 ひとつは、モータースポーツ参戦マシンとしての可能性だ。現在、EVによる世界選手権レベルのカテゴリ―は、フォーミュラ1(F1)や米インディカーのような車両形態のフォーミュラEがある。また、スポーツカーをベースとしたカテゴリ―では、FIA E-GT構想があるのだが、国際格式で世界各地を転戦するようなEVの規定はまだ確定していない。

 STIは将来的に、こうした新たなGT形式のEVレースに参戦する可能性が考えられる。

 もうひとつの可能性は、モータースポーツと連携する量産型のスポーツEVの開発だ。STIの歴史を振り返ると、90年代から2000年代には量産車をベースにWRC(世界ラリー選手権)の参戦マシンを仕上げていた。EVでは、WRCとは逆の発想で、モータースポーツで専用マシンを先行導入し、そこでの知見を集積した量産EVスポーツを生み出すという考え方も成り立つ。

 いずれにしても、STIとして、またはスバルとして高性能EV関連ビジネスをどのように事業化していくのかは、これから2社間で詳細な議論が始まることになるだろう。

生き残りを懸けた本気のトライ&エラーが2022年にスタートを切ったといえるのではないか?

「STI E-RA CONCEPT」の部品構成について、今回明らかになったのは、モーターはギアとインバーターを一体化したヤマハ発動機製であることだ。

 STIとしては、早期のマシン開発のためには電動関連パーツを自社開発していては時間的に間に合わないため、外部企業から部品調達するのはやむを得ない。

 それらの部品を活用した上で、森氏は「EVの四輪制御は、これまで我々が(レースや量産車で)培ってきた技術や考え方とはまったく違う」と、STIでの現職就任以前にスバルでWRX STIの開発を総括した自身の実績を踏まえた感想を語った。また、「クルマの操安性を高めることは、EVでも、またはWRX STIで採用した機械式のトルク配分システムでも、結果的には同じことになる」と前置きし、モーターのトルクを分配するトルクベクタリングシステムに対する研究開発の難しさを指摘した。

 量産EV「ソルテラ」でも、究極のタイムアタックマシン「STI E-RA CONCEPT」でも、他社の技術や部品を利用する一方で、四輪制御には徹底的に自社でこだわることで差別化につなげるというスバルとしてのEV事業化の戦略が打ち出せているように感じる。

スバルの真骨頂である純ガソリンの水平対向エンジンはいつまで存続できるのだろう?

 22年には新型「WRX」の登場が期待されているが、その段階でハイブリッドを含めた電動化技術が導入される可能性は低いとみられる。

 そうした中、新型「WRX」のベースともいえる新型「S4」について、21年後半に千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイで行われた、メディア向け試乗会に参加した際、旧知のエンジニアやデザイナーなど、ベテランから若手まで20人近いスバル関係者に「グローバルでの急激なEVシフトの中、水平対向エンジンはいつまで量産されると思うか?」と問いかけをしてみた。これに対して、ほぼ全員が「分からない」と答えた。

スバル関係者の中には、昨今の業界事情や社会の変化に対する必要性について言及した人もいたが、問いに対する答えとしては結局「分からない」という。

 例えば30年までにグローバルで年間で新車350万台をEVとすると21年12月に発表したトヨタの関係者の多くも、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど内燃機関が今後、どのように推移するのは、肌感覚ではつかみ切れていない人が数多くいる印象だ。

 トヨタ「bZ4X」と「ソルテラ」の関係のように、スバルが、トヨタ主導型EVのスバルバージョンをどのタイミングで増やしていくのか?

 水平対向エンジンは、30年代には水素燃料などを活用した高性能仕様のみが生き残るのか?

 そして、車両の基本設計と製造でスバルが主導権を握ってきた「BRZ」と「GR86」の第3世代は実現可能なのか?

 長年にわたり、四輪駆動、ターボエンジン、ラリー、アウトドアスポーツ、そして雪国での生活車といった、かなりとがった商品イメージを持つスバル。

 そうした中で登場した「STI E-RA CONCEPT」はEV技術の本格的なテストベッド(基盤)であり、まさに、次世代スバルの象徴的存在だといえるだろう。EVシフト本格化時代を目前に、スバルの生き残りを懸けた本気のトライ&エラーが2022年にスタートを切ったと言えるのではないか。

 

 


 


 

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